Monthly rep. 2021年9月 ―エネルギー・資源―

今月は、エネルギー・資源分野の状況を整理してみた。エネルギー分野では、経済産業省が中長期のエネルギー政策を示す新しいエネルギー基本計画の原案を公表した。総発電量に占める各電源の割合は、火力発電が41%(LNG20%、石炭19%、石油など2%)、再生可能エネルギーが36~38%、原発は20~22%、水素やアンモニア発電は1%を見込む。再生可能エネルギーでは、特に太陽光の年間発電量は19年度の2倍の約1400億キロワット時を見込む。洋上風力発電は、本格導入に力を入れる。ただ工事期間などが長く30年の稼働は限定的となり、30年度時点では開発期間が短期の太陽光に頼らざるを得ない。導入拡大への最大の課題は太陽光パネルの置き場所。国土面積あたりの日本の太陽光導入容量は既に主要国の中で最大。国土が広く、置き場所も広大な海外に比べると導入拡大は簡単ではない。このため国は住宅や中小工場への設置に重点を変えつつある。発電事業者が設備を顧客企業の敷地に無償設置し、電気を顧客が購入する「オンサイトPPA(電力販売契約)」という事業モデルも出てきた。太陽光発電の増加には、こうしたモデルの普及が不可欠になる。もう一つの課題は発電量が天候で変わることで、発電量の増減にあわせて別の電源で補う必要がある。現在は火力発電でその分を調整しているが、排出削減には蓄電池の利用が欠かせない。基本計画では、家庭や工場などで30年に19年度までの累計の導入量の約10倍に相当する累計2400万キロワット時の蓄電池の導入を見込む。また、大手電力ごとに送電網がわかれ、それをつなぐ地域間送電網が不十分なため再生エネの大量導入には送電網の増強も不可欠となる。水素・アンモニアは、今回の原案で2030年度の電源構成に初めて盛り込んだ。既存の火力発電所を活用することが狙いだが、水素・アンモニアの利用には技術開発やコスト削減など、実用化に向けては未知数の部分もある。課題はコストや生産方法。水素とアンモニアは化石燃料から製造する場合、カーボンニュートラルとするために生産工程でCO2の回収・貯留が必要となる。再生エネで水を電気分解する生産方法もあるが、安い再生エネの確保が必要になる。原子力は、現行の目標値を維持した。達成には電力会社が申請した全27基の稼働が必要となる見通しだが、再稼働できたのは計10基にとどまり、目標実現にはほど遠いのが現状である。カーボンニュートラルを達成するためには、太陽光や風力を最大限伸ばす努力はもちろん、資源に乏しい日本は原発や省エネも、あらゆる手段を動員することが求められている。

資源分野では、大手化粧品メーカーが、使用済みの化粧品のプラスチックボトルを回収し、分解・再生して同じ用途で使う取り組みを始める。「水平リサイクル」と呼ばれる循環で、化粧品での実用化は世界で初めて。ボトル製造で9割以上を再生素材で賄える。化粧品ボトルは着色されているうえに、油分を豊富に含むために洗浄しにくく、水平リサイクルが難しかった。今回の再生ボトルでは、回収したボトルを化学分解して原料に戻し、それを精製後に化学反応させて再生する「ケミカルリサイクル」の手法を使う。これまで、ペットボトルの水平リサイクルは、始まっていたが、難易度が高いとされた化粧品ボトルで水平リサイクルが本格化する。課題はコストで、ケミカルリサイクルで再生されたPET樹脂の原料コストは、新しい石油由来の素材に比べて1.5~2倍になる見込み。ただ、メーカーでは、再生ボトルへ切り替えた後も販売価格を据え置き、今後、取扱量を増やして価格を引き下げたい考え。

飲料業界で使用済みペットボトルの回収に向けた異業種連携が活発化している。大手飲料メーカーではコンビニ大手と連携。ペットボトルの回収機を独自開発し、コンビニに設置する実証実験を始めた。大手飲料メーカーの自動販売機のオペレーションルートで使用済みペットボトルを回収し、リサイクル工場に搬入。ほぼ全量を自社製品のペットボトルとして再生する。他の飲料メーカーも、自治体や小売店と連携してきれいなペットボトルを回収する試みを実施している。

現在、日本ではペットボトルの回収率が91.5%、リサイクル率が85%以上と世界最高水準を誇っている。ただし、回収率やリサイクル率が高くても、繊維やトレイといった別の製品に生まれ変わる「ダウンサイクル」の割合が多いのが現状。ダウンサイクルで作られた製品は、他の素材と混ざってしまうため、元のペットボトルに戻すことが難しい。ダウンサイクルの終着駅は「焼却処理」となる。資源の有効活用という意味でも、回収したペットボトルをそのままペットボトルとして再利用する割合を増やしていくことが望ましい。今後、水平リサイクルを進めるには、動脈側の企業が、小売店、生活者、行政などと一緒になって、静脈(回収)側と連携することで、スムーズな回収からペットボトルとして再供給する流れを整備することが必要不可欠となる。そして、それは、付加価値の高いリサイクルをできる循環型社会のコアを作ることにもつながる。

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BCT Monthly report 2021年09月