Monthly rep. 2020年9月 ―エネルギー・資源―

今月は、エネルギー・資源分野の状況を整理してみた。政府の非効率石炭火力のフェードアウトの表明後、経産省と国交省は「洋上風力の産業力強化に向けた官民協議会」を立ち上げ、洋上風力発電の計画的・継続的な導入拡大を官民が一体となる形で進めるため協議を始めた。再生可能エネルギーを主力電源化するための切り札として、洋上風力を位置付けている。協議会での論点の一つが、洋上風力発電の導入目標である。海外では、野心的な目標を掲げており、30年までに英国は最大3,000万キロワット、米国は2,200万キロワットを設定しているが、日本のポテンシャルは1億2800万キロワットと大きいものの、導入目標は設定されていない。協議会では、当面10年間は年100万キロワット、40年にかけては3千万キロワットを超える導入という方向性が示された。また、発電コスト8~9円/kWhを目指すことなどが議論されている。ただ、洋上風力などの再生可能エネルギーのポテンシャルが高い地域は、北海道や東北、九州などに偏っており、再エネを消費地に送るには地域を越えた融通が必要になる。しかしながら、送電線の整備には巨額の投資が必要で、費用負担が課題となる。現状では、地域間連系線など広域連系系統の増強費用を全国で負担する「全国調整スキーム」の議論が進んでいるところである。しかし、送電線の増強には時間も費用もかかるため、計画的な送電線の増強・整備を進める一方で、既存の送電線を最大限活用することも必要となる。そこで、経産省は、再生可能エネルギーの普及に向けた送電網の利用ルール見直しなどの議論を始めた。現状のルールでは発電量が増えて送電網の容量を超えると再生エネは火力発電などよりも先に出力を制御されることになっている。経産省は、このルールを見直して、再生エネが優先的に送電網を利用できるようにしたい考え。ただ、送電網の容量不足は、すぐには解決しない。そのため、再生エネを発電した地域で消費できる「地産地消」を促す取組みが重要になる。大手商社と電力会社は、家庭間で再エネの余剰電力を売買するシステムの構築に取り組む。太陽光パネルとAI蓄電池を使い、AIで発電量や消費量を管理し、余剰電力を束ねた上で、家庭間で売買する。課題は足元で高額な蓄電池の普及である。現在の蓄電池価格は1キロワット時あたり20万円前後とされており各社ともコスト削減に向けた技術開発を急いでいるが、安価な中古車載電池を活用するなど普及に向けた取り組みが期待される。


資源分野では、代替素材の利用を含む製品・包装の環境配慮設計によるプラスチックのリデュースを意識した取り組みが広がっている。食品業界では、プラスチック包装の薄肉化や軽量化、商品に付随するプラスチックトレイの使用中止や小型化、紙素材への変更などが行われている。リユースの面では、洗剤など日用品の容器を「循環」させる取り組みが広がっている。大手コンビニエンスストアの一部店舗では容器を持参して液体のみを購入する量り売りを始めた。無料の容器に洗剤を入れ、はかりに乗せると量に応じて価格が表示される。次回以降は容器を持参して液体を購入し、使い切ったらまた液体を補充する。量り売りは日本ではなじみが薄いが、リピート率は8割ほどで、容器を使い捨てない生活スタイルが少しずつ浸透している。日本では量り売りが根付いていない一方、詰め替えが定着している。詰め替え容器は通常の製品容器に比べてプラ使用量が2~3割ほどだが、製品全体の詰め替え用比率は8割に上る。そのため、日本では詰め替え容器の再生が重要な課題となっており、日用品メーカー大手2社は共同で詰め替え容器の再生に向けた仕組み作りを始めた。ペットボトルと異なり、詰め替え容器はほかのプラ容器と混ぜて捨てられ、多くが焼却されている。これを自治体と連携して個別回収する。使用済み容器を回収し、同等の容器を再生産する「水平リサイクル」の技術開発も進める。廃プラスチックのリサイクル技術に関しては、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、資源として循環させるための革新的なプロセス技術開発事業に着手すると発表した。同事業は、廃プラスチックについて、最適な処理方法に振り分けるための選別技術、元のプラスチック材料と遜色ない材料に再生する技術、分解して石油化学原料に転換する技術などを連携して行う。この技術の適用により、2030年度までに、これまで国内で再資源化されていなかった廃プラスチックのうち、約300万t/年を有効利用することを目指す。


今後、SDGs対応、ESG投資などで拡大する再生プラスチックの利用ニーズに応えていくためには、廃プラスチックの資源価値を高めることで経済的な資源循環を達成することが必要となる。そのため、リサイクル技術をさらに発展させ資源効率性を向上させるとともに、付加価値を生み出しつつ二酸化炭素排出を削減することが求められている。

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BCT Monthly report 2020年09月