Monthly rep. 2022年06月 ―ライフスタイル・信号処理・その他―

今月は、ライフスタイル・信号処理・その他分野の状況を整理した。厚生労働省は企業に対し、従業員に副業を認める条件などの公表を求める方針。副業を制限する場合はその理由を含めて開示するよう促す。働く人は、勤め先を選ぶときに、副業のしやすさを判断材料にできるようになる。副業の可否は既に就業規則で示している企業も多いが、ホームページなどで公開し、外部の人や投資家などにも分かるようにする。労働政策審議会での議論を経て正式に決める。欧米では多様な働き方の手段として副業が広がっている。ドイツや英国では競合企業での勤務などを除き、副業への制限は認められない。労働市場の流動性の高い米国でも副業への法的規制はなく、原則自由とされる。国内では、副業を認める企業は増えつつあるが、大企業ほど慎重な傾向があり、情報を開示してもらうことでさらなる普及を目指す。政府は副業の普及が成長分野への人材移動につながると考えており、キャリアアップ支援などに3年で4000億円を投じ、必要なスキルを身につけるのを後押ししたい考え。このような流れの中、人材サービス各社は、地方の中小企業が抱える人手不足や経営課題の解決に向け、都市部の働き手が地方で副業に取り組めるよう支援を拡大している。都市部の働き手に地方の中小企業で副業としてこなせる仕事を紹介したり、副業したい都市部の人材と地方企業をマッチングするサービスを行っている。実際に都市部で働きながら地方で副業に就く人材も増えている。マッチングサービスで地方の副業で働いた人は、前年同月比6倍に拡大した。新型コロナウイルスによるリモートワークの浸透で、転職や転居をしなくても地方の仕事をしやすくなったことが大きな要因となっている。地方の企業にとっては、都市部で働く専門性が高い人材に例えば新規事業への挑戦を支えてもらうなど、新たなメリットも少なくない。都市部の副業者に対しては、地域の企業と継続的に関わりをもつ地域貢献が求められる側面もある。商品企画であれば、企業に契約社員として入り込み、販路拡大なども含めた課題解決に向けて一緒に考え実行していく働き方が求められる。

ただ、働き手の副業への意識は高まっているものの、労働時間の把握や管理が難しいなどとして、解禁に二の足を踏む企業はまだ多い。人材サービス会社の研究所の調査によると、正社員の副業を認めている企業は55%。少子高齢化に伴う労働力人口減少への対策としても副業への期待は大きい。同時に、副業を普及させるために制度やルールの理解を企業も働き手も深めて、就労環境を充実させていく工夫が一層求められている。

信号処理の分野では、AIを活用して、建設工事などを効率化するスタートアップの取り組みが広がってきた。大学発のスタートアップでは、大手建設会社と連携し、数百ページに及ぶ施工計画書類をAIで読み取り、建具や部材の情報を瞬時に検索できるシステムを開発した。たとえば、設計変更に伴う費用を見積もる際、使用予定だった部材の種類や分量などを短時間に確認できる。実証実験では、従来は数時間かかっていた設計変更時の費用見積もりの作業を瞬時に完了できたという。このような、AIを活用した効率化への取り組みの背景には、労働集約型産業である建設業界の課題がある。建設業界の2020年の労働生産性は、全17業種のうち12番目の水準にとどまる。また、少子高齢化に伴う担い手不足も加速しており、建設業の21年の就業者数は482万人と20年間で150万人も減少している。さらに、労働集約型産業ということで、労働基準法の時間外労働の上限が猶予されていたが、24年に撤廃される。建設業界とって生産性向上は待ったなしの課題で、AIなどのデジタル技術の活用が必要な状況となっている。施工段階だけでなく、建物の設計・提案段階を含めてデジタル化できる領域は幅広い。AI技術を持ったスタートアップとの協業によるデジタル化の進展が期待される。

中小企業においても、社員の高齢化に伴う技術伝承が待ったなしの状況である。染色加工を行う企業では、熟練社員が目視で実施していた色味の品質検査をAIを活用しデジタル化することを目指している。品質検査で過去2000件分の熟練社員のノウハウを分析し、AIが若手を指導するシステムを開発し、試験運用を始める。経験や勘から脱却し、AIやデジタルデータを活用したシステムへの移行を目指す。しかし、大企業に比べて資金やIT人材が少ない中小企業はDX化が遅れている。システム開発のパートナーを見つけやすくなる仕組みをつくったり、パッケージ製品の活用や開発を後押ししたりするなど、商工会や大学、金融機関など地域や業界ぐるみで効率的にAIなどITを活用できるよう促したりする政策的な支援が求められる。

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BCT Monthly report 2022年06月