Monthly rep. 2022年03月 ―エネルギー・資源―

今月は、エネルギー・資源分野の状況を整理してみた。エネルギー分野では、再生エネ市場を支えてきた固定価格買い取り制度(FIT)が縮小し、市場価格との連動性を重視した新制度「FIP(フィード・イン・プレミアム)」が4月に始まる。FIP制度は、再エネを火力発電などの他電源と同様に、電力市場 で取り引きできる体制に(自立化した電源)するために段階的に市場価格と連動できるようにするためのワンステップとして導入される。12年に始まったFITは再生エネ由来の電力を、大手電力が固定価格で買い取る制度。太陽光発電などの普及に効果を上げた一方、価格が変動しないため発電事業者に競争を促す余地がなく、コスト抑制効果も乏しかった。FIPでは市場で売電した後にプレミアム(一定の補助額)を政府が上乗せする。ただ市場価格は変動するため、発電事業者は市場に売るタイミングを考慮しなければならない。事業者は市場の需要が旺盛な局面で電力を供給できれば、FITより大きな収益を得ることができる。ただ、FIPでは売電先を探す必要があるのに加え、発電予測に基づく発電計画の策定などの義務が発電事業者に課される。また発電予測値と実際の発電電力量の誤差が発生した場合には、発生した電力量に応じて「インバランス」と呼ばれるペナルティーを支払う必要がある。そこで、事業者から電力を集め、卸市場や需要家と取引するハブの役割を「アグリゲーター(節電仲介業者)」と呼ぶが、このアグリゲータのスタートアップが、再生可能エネルギーの発電事業を手助けするサービスを相次いで始める。気象データを基に太陽光発電量を予測する人工知能(AI)システムを開発。これを基にFIP制度で求められる事業者の発電計画の作成を代行。FIP制度を踏まえた価格で事業者から電力を買い取り、顧客企業に売る。今後、FIP制度への円滑な移行には、このようなアグリゲーターを増やす必要がある。

政府は、再生エネ由来の電力供給を増やすため、大型蓄電池の活用を促進する仕組みを設ける。蓄電池を送電網につなぎたいと事業者が要望した場合、送電会社に応じる義務を課し、導入費の最大半額相当の補助金も出す。送電網の容量不足などが再生エネの導入を阻む一因となっており、一時的に電気をためられる蓄電池で補完し、安定供給につなげる。また、経産省は送電網につなぐ蓄電池の導入価格を揚水発電と同水準の容量1キロワット時2万3千円への引き下げをめざしている。変動の大きい再生エネの10分の1の容量の蓄電池があれば送電網を安定させられるとの見方がある。ただ、投資コストは、今後の蓄電池の価格低下を織り込んでも膨大な金額となる。そこで、注目を集めているのが、安価な蓄熱発電である。蓄熱発電は電力を熱や化学エネルギーに変え、溶融塩や砕石に蓄える。再び発電する際には、熱から水蒸気をつくってタービンを回すなどする。蓄電コストは現時点で1キロワット時あたり約1万円とリチウムイオン電池の5分の1。設備を大型化すればさらに安くなる。蓄熱発電が普及すれば、再エネで余った電気を安く大量に蓄えられる。蓄熱発電の課題は、熱を再び電力に変えるのに一定の時間がかかることだが、蓄熱発電で大量の電力を最長で2週間程度蓄えつつ、電力の小刻みな調整は蓄電池が補完的に担うことで、効率よく再エネ出力を平準化することが期待される。
資源分野では、プラスチックの資源循環をライフサイクル全般で促す「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラ法)が4月1日から施行される。事業者に対し、削減計画を立てて使用量を減らすよう義務付ける。木などの代替素材への転換といった対応を企業は取り始めた。削減対象となるのは飲食店やコンビニ、スーパーの店頭で配るストロー、スプーン、マドラーのほか、ホテルが提供するヘアブラシや歯ブラシ、クリーニング店のハンガーなど12品目。削減目標の設定は各事業者に委ねているが、全然減っていなかったり、増えたりした場合などには50万円以下の罰金が科されることがある。

もっとも、今回の施策で削減対象となるプラ製品の国内流通量は10万トン弱にとどまる。日本全体のプラスチックの排出量は年850万トン程度で、1%程度にしかすぎない。プラスチックを減らす効果は限られる。そして、リサイクルを推進するだけでは、大量に使い続けるのは変わらない。洗剤などは液体での流通が増え、環境に優しいからと詰め替えパックを使う人が多い。しかし、それにもプラスチックは使われる。国境を越える長距離輸送には耐久性のあるパッケージが必要だが、地域単位でモノを回せば簡素化でき、温暖化ガス排出も減らせる。また、最近では、飲料メーカーが、マイボトルに対応した自動販売機を導入するなど、飲料を容器なしで販売するサービスは増えている。このようにプラスチックの効果的な削減には、生産の仕組みから流通、社会のありようまで変えていくことが求められる。

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BCT Monthly report 2022年03月