Monthly rep. 2022年02月 ―交通・物流関連―

今月は、交通・物流関連分野の状況を整理してみた。国土交通省によると、トラックの積載効率は16年度に40%を切った。さらに24年にはトラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用されることで、ドライバー不足がさらに深刻化し、「物流の2024年問題」と呼ばれる物流危機が懸念されている。こうした中、経産省と国交省は、昨年10月に「フィジカルインターネット実現会議」を立ち上げ、物流の維持・効率化に向けて、オールジャパンでフィジカルインターネット実現に向けた議論を進めている。

フィジカルインターネットとは、複数の企業が保有する倉庫やトラックをシェアリングし、物資を効率的に輸送しようとする、新しい「物流システム」の考え方。具体的には、IoTやAI技術を活用することで、物資や倉庫、車両の空き情報などを見える化しつつ、貨物も規格化された容器に詰めて管理する。こうして管理された貨物は、複数企業の物流資産(倉庫、トラックなど)をシェアして構築したネットワークを通じて輸送される。こうすることにより物流効率は高まり、物流需要増加やドライバー不足の解決手段になるほか、燃料消費量を抑制し温室効果ガス排出量を削減につながると考えられている。フィジカルインターネットの実現には、物流事業者の取り組みとともにメーカーや小売り事業者など荷主側の意識変革が必要となる。日本では、物流がコストセンターとしか見なされてない状況から、各企業による戦略的な物流体制の確立が求められる。メーカーから物流、小売りまで、業界の垣根を超えた物流データの連携が必要で、物流を「協調領域」とし、パレットや外装など物理的な標準化にとどまらず、販売計画や出荷計画、気象情報なども連携させることで徹底した効率化を目指す必要がある。経済産業省と国土交通省が策定した2040年までのフィジカルインターネットの実現に向けたロードマップでは、当面は30年までに業種・業界別サプライチェーンで物流のデジタル化・効率化を促進する。その後、各業界での取り組みの進捗を踏まえ、業界の垣根を超えたサプライチェーンの効率化を担う産業界全体のフィジカルインターネットを40年に実現するとしている。フィジカルインターネットの実現に向けた芽も出始めている。小売り業界ではコンビニ大手3社が、店舗への配送に同じトラックを使う共同配送の実験を行った。企業、業界を越えた連携をいかに促進できるかが、フィジカルインターネット構築の鍵になると考えられる。今後も、フィジカルインターネットの実現に向けた進捗に注目していきたい。

交通分野では、特定条件下で運転を完全自動化する「レベル4」の車が2022年度にも国内で実用化する見通しになった。政府は、道路交通法改正案を提出し、レベル4の移動サービスの運行許可制度を作る。レベル4は運転者が乗らず遠隔監視のもとで運行する。政府は高齢化が進む地方を走るバスなどでの活用を期待しており、22年度中にも運行を始めたい考え。鉄道においても、運転手の人手不足が深刻化していることから、JR各社が、自動運転の導入に向けた技術開発を進めている。JR東日本では、2025-30年ごろ山手線などに自動列車運転装置(ATO)の導入を目指している。JR九州では、自動運転列車で運転士免許がない従業員が乗務する「ドライバーレス運転」を2024年度末に実現すると発表。一部区間で20年末から自動運転列車の運行を実証実験している。

一方、地方では、AIによるデマンド交通を利用した公共交通システムを取り入れる自治体が増えている。人口5千人弱の中山間地の自治体では、バス路線やタクシー会社が撤退。町営バスの利用も低調で、デマンドバスに切り替えたものの、客が特定の便に集中する一方、利用全体は伸び悩んだ。人が経路を考えるため電話で1時間前までに予約する必要があり、地区をまたぐ移動には乗り換える必要もあった。そこでAIを活用した配車システムを入れて刷新。スマートフォンで乗り合いバスの乗降場所や人数、希望時間を入れると、到着時間と車の位置が出る。4~6人乗れるミニバンなどが、5~20分前後で迎えに来て家と目的地を結ぶドア・ツー・ドアで町内を走り回る。配車効率が向上し、複数人の乗り合い率が2~3割から3~4割に上がった。21年の客数は19年比2倍に達した。

国は補助金で自動配車システムを含むMaaSを後押しし、20年度は50以上の地域で実験が行われた。実証実験などは盛んだが、実用化せず終わる地域も少なくない。定着しない背景に収益化の難しさがある。AIでいかに配車効率を高めても、移動ニーズや輸送力には上限がある。構造的に旅客運賃だけで黒字化する壁は高い。対応策の一つとしては、多目的利用による稼働率の向上が考えられる。例えば、乗り合いバスを飲食物などの宅配や荷物受け渡しに使ったり、自治体や事業者が車両を移動診療などに活用したり、法人の従業員や客の送迎需要を発掘するなど、稼働率を向上させ、収益源を多角化していくことなどの取り組みが求められる。

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BCT Monthly report 2022年02月