Monthly rep. 2021年8月 ―交通・物流関連―

今月は、交通・物流関連分野の状況を整理してみた。物流分野では、ドローンのレベル4が22年にも解禁になる予定で、ドローンを使った実サービスの実装に向けた開発が進み始めた。ドローン飛行は難易度などに応じ、大きく4段階に分かれる。操縦者が目視内でドローンを手動で操作する場合は「レベル1」、目視内でドローンがあらかじめ設定したルートを自動で飛ぶのは「レベル2」。いずれも飛行地域は有人か無人かを問わない。「レベル3」は管理者の目視外かつ、人がいない地域の上空を自動で飛ぶ。現在、日本国内ではレベル1~3が認められている。最も難易度が高い「レベル4」は、管理者の目視外でも住宅地など人が密集する地域の上空を自動飛行できる。大手EC企業や、航空会社などは、「レベル4」のドローンを使った事業化を目指し、離島への食品配送や、医療品の配送の実証実験を実施している。22年度にも離島や山間部で日用品や医薬品の配送を始め、将来は都市部での展開も検討している。ただ、レベル4はリスクも高く、まずは既存の配送業や小売業が中心になると予想されている。ドローンは交通の便が悪い過疎地域でも短時間で配送でき、果物など傷みやすい生鮮食品の運搬でメリットがあり、箱に入れれば卵なども運べそうで、日常の買い物代行が期待できる。一方、現状の機体の大きさや性能では重たい米袋などは運べない可能性もある。規制緩和で事業化のハードルが下がるのを機に、今後は便利なサービスの創出や、サービス実現のためのドローン開発なども求められる。

交通分野では、人口減少で地方の路線バスなどの公共交通機関の経営が悪化しており、公共交通の維持が難しくなって来ている。19年度までの10年間で路線バスは9482キロメートル分が廃止された。自治体などは高齢者の移動手段を確保するため、オンデマンドバスなどを運行しているが、前日までに電話予約が必要など、利便性が課題であった。そこで、地方のバス会社では、乗客のリクエストに応じて運行ルートが随時変わる「ダイナミックルーティング」を導入。運行データを分析し、走行ルートが随時変わるバス運行に取り組んでいる。ライドシェアのように乗客が自由に乗り降りできることで、移動需要を掘り起こし、人口減で経営が悪化する地方バスの生産性を高め、交通インフラ維持につなげる狙いである。しかし、単に新しい交通手段を取り入れただけでは、乗客が簡単には増えない。今回の取り組みでも、自治体と組み、地域住民にバスの乗り方やアプリの使い方を教える勉強会を開いて利用客を地道に伸ばしており、公共交通の維持には、地域住民の理解と協力が欠かせない。

人口が少ない地方では、高齢化による運転手不足や免許返納問題などを背景に、自動運転バスの導入が検討されている。北陸地方では、走行環境条件付きで自動運転する「レベル3」サービスが国内で初めて始まった。町内の飲食店に設けたモニターから遠隔で監視し、運転手がいない3台の電動カートが公道を走る。鉄道の廃線跡を活用したサービスは、料金を徴収しながら観光客や地域住民の足として展開する。目指すのは、財政に乏しい地域でも持続可能な自動運転システムの構築。電動カートは、「グリーンスローモビリティ」と呼ばれる時速20km未満で公道を走行できる車両。低速な分、規制が緩く、ベースとなる車両価格を抑えられる。また、スタッフ1人が3台を同時に遠隔監視にしており、運用コストも下げて今後の採算性を検証していく方針。ただ、課題はある。現在無人走行できているのは一部の区間に過ぎない。一般道と交差している区間では、安全のため監視員が同乗している。監視員のみでの自動運転の実現が、運用コストを下げるうえでも欠かせない。これは、実証実験などの一時的な運行を除き、ドライバー不在の公道での走行は法律上認められていないからである。一方、経済産業省と国土交通省が設置した自動走行ビジネス検討会は、2022年度目途に限定エリア・車両での遠隔監視のみ(レベル4)での自動運転サービスを実現し、25年度までに無人自動運転サービスを全国40カ所以上で実現するという方針を示した。今後、国には、自動運転に積極的に取り組んでいる自治体に対しては補助金を出したり、実証実験のハードルを下げたりするなどして、レベル4の普及と定着に向けたサポートを行うことが求められる。地域住民にも理解と協力が求められる。「グリーンスローモビリティ」を使った低速の自動運転バスは、自動運転でない自家用車、タクシー、バスと混在することになる。レベル4と言っても、すべての事象に対応することは難しい。地域の住民には、無理な走行はしないなど自動運転バスと共存できるような運転マナーなどが必要であり、住民の社会的なコンセンサスを醸成することが必要になると考えられる。

財政負担の将来増が許されない中、自家用車に頼らずに生活できる地域社会という理想の実現に向け、無人運転を取り入れて財政負担を軽減し、持続可能なシステムにまでうまく移行できるのか、今後の進展に期待したい。

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BCT Monthly report 2021年08月