Monthly rep. 2021年3月 ―エネルギー・資源―

今月は、エネルギー・資源分野の状況を整理してみた。エネルギー分野では、2030年の再生エネ導入比率の見直しを求める声が日本の産業界から上がっている。国内の再生エネ導入に積極的な大手企業が集まる団体などでは、30年の再生エネ導入目標を30年の再生エネ導入目標を「22〜24%」から「50%」に引き上げることを提言した。世界で製造過程における再生エネの使用を求める企業は増えており、現状の日本では再生エネの電源を調達することは困難で、将来的にサプライチェーンから除外されかねないとして大幅な拡大を求めている。経済産業省が示した2030年度の再生可能エネルギー導入量の見通しでは、現行の支援政策を維持した場合、全体の導入量は4割増える見通し。太陽光の課題は用地不足。同省は関係省庁と連携して上積みを探る方針で、具体的には時間がかかる環境アセスメントの効率化や、荒廃した農地を転用して太陽光発電に使う取り組みを進める。こうした導入促進策によってどの程度の上積みが可能かを見極めた上で、30年度の新しい電源構成や次期エネルギー基本計画の議論に反映させる。


カーボンニュートラルのためには、再エネの拡大はもちろんだが、それだけでは達成は難しく、現状の火力発電の低炭素化、脱炭素化が欠かせない。そこで有望視されるのが、石炭やLNGに代わり、アンモニアや水素を燃焼する方法。普及に向け水素、アンモニアの低コスト化、安定調達が求められる。現在主流のアンモニア生産は、水素を天然ガスなどの化石燃料から取り出す際に大量のエネルギーを使用する。CO2排出も大量で、CO2全排出量の3%を超えるという。CO2を減らすには太陽光や風力などの再生エネを使った水の電気分解により水素を取り出すか、石炭や天然ガスから水素を取り出し、残るCO2を集めて地中に埋めるなど処理が必要となる。民間では、CO2を出さないために水素を水の電気分解から得る「グリーン水素」や「グリーンアンモニア」を実現する取り組みが活発化しており、実用化に向けた今後の展開が期待される。


資源分野では、政府が、廃プラスチックの利用や素材開発に向けて新たな戦略を作ることを発表した。使用済みプラスチックの再利用を現状の80%程度から2035年までに100%へ引き上げる目標を掲げる。日本は19年にペットボトルや食品のトレーなどの廃プラをおよそ850万トン排出した。このうちリサイクルしたり燃料化したりしたのは3割に満たない。火力発電へ活用した「エネルギー回収」を含めると利用率は85%となるが、火力発電への利用は環境負荷が高く、今後はマテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルの比率を高め火力発電に回す割合をできるだけ減らしていく考え。新戦略では廃プラの有効利用を100%にすると明記するとともに、火力発電用に回す割合をできるだけ減らし、リサイクルや燃料化の比率を高める。そのため、新戦略では企業にリサイクルを前提とした製品設計を求める方針。同時に、メーカーや販売業者が廃プラスチックを自主的に回収・リサイクルする仕組みも検討する。また、サトウキビなどを原料とするバイオマス(生物資源)プラスチックへの代替も進め、30年までに200万トン導入する目標を掲げる。
ただ、プラスチックを取り巻く現状において、石油由来のプラスチックをいきなりすべて、つまり100%バイオマスプラスチックにするということは原料の調達も含めて極めて難しい。そこで、バイオプラの導入を進めるのに有力な手段とされるのが、マスバランス(物質収支)方式を適用したバイオマスプラスチックや廃プラスチック由来再生材の導入である。マスバランスの概念そのものは、すでに紙(FSC認証など)、パーム油、電力など多様な業界で使われている。マスバランス方式を適用したバイオマスプラ、廃プラ由来再生材には、食品と競合しないことや、第三者認証によってトレーサビリティーが確保されている、などのメリットがある。特に原料から包装材加工までのバリューチェーンで第三者認証機関から厳しい監査を受ける。これによって、100のうち5の原料がバイオマス由来であれば、その5に対しては100%バイオマスプラスチックとして認証されていると言えるシステムである。普及させるためには最初は5%かもしれないが、そこに価値をつけられ、また少しでも増やすことができればロット数も増やすことができて、結果的に原価を下げることができる。安くなればまた普及につながるという好循環が期待できる。


今後、リサイクル製品やバイオプラを拡大させていくには、価格と環境価値とのギャップを埋める適切なインセンティブを設定することが必要となる。ヨーロッパでは、CO2の削減ができるバイオマス由来やリサイクル製品であれば、その割合に対して、税金を安くすることが始まっており、炭素税の導入が検討されている日本においても、普及に向けた議論が進むことを期待したい。

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BCT Monthly report 2021年03月