Monthly rep. 2021年2月 ―交通・物流関連―

今月は、交通・物流関連分野の状況を整理してみた。国内の物流業界では、トラック運転手の不足や荷物の増加が続いているにもかかわらず、これまでの慣行の影響から、積み替えの多さやトラックの待ち時間が1時間超など非効率な状況が続いている。そこで、食品や日用品メーカーが、共同で新たな運送方式に乗り出している。従来はメーカーから卸に届いた段ボールをフォークリフトで運びやすいパレット(荷役台)に載せ、店への出荷時はかご型台車に、さらに店では車輪付き小型キャリーに3度も積み替えていた。製・配・販がそれぞれ自分の都合で考えた部分最適となっていた。これを店舗起点に発想を転換、最初のメーカー出荷時から店舗別キャリーに載せる方式に変更し、運転手の平均作業時間は6時間から4分の1の85分に減るなど効果が出ている。トラックの待ち時間については、荷さばき場の予約システムを導入することで、入場車両の情報を可視化し、平均1時間前後に及んでいた待機時間が同7分に減らすことができた。また、国土交通省によると、トラックの積載率(重量ベース)は約4割程度と低く、改善余地があった。そこで積載率を上げるため共同配送に踏み切る企業が増えている。飲料メーカーと食品メーカー、または、日用品メーカーなどが共同配送を行う取組みを行っている。従来、重量のある飲料品だけでは、重量制限から隙間があったが、そこに軽量の食料品や日用品を載せることで、重量ベースでの積載率を高めることができた。さらに、物流会社同士でもシステムを共用して荷物のデータを一元管理できるようにし、再配達の効率を上げるための取組みも進められている。企業間で協調して物流の効率化を目指す動きが始まっており、今後の展開に期待したい。


交通分野では、温暖化ガス排出の削減に向け、「脱・ガソリン車」の動きが各地で相次いでいる。カナダのケベック州は35年までにガソリン車の新車販売を禁止する。米カリフォルニア州は、35年までに排ガスを出さない「ゼロエミッション車」の新車販売を義務付けると表明している。そして、英政府は、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止すると発表。ガソリンと電気を併用するハイブリッド車(HV)も、排出ゼロの規制をクリアしたもの以外は35年までに販売を禁止する。そのため、EVの普及促進や再生可能エネルギーの促進などに120億ポンド(約1兆6千億円)を投じる。一方、日本政府も、2035年までにすべての新車販売をハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)などの電動車へと切り替える方針を示した。HVはガソリンエンジンと併用のため、政府目標の「50年の温暖化ガス排出量の実質ゼロ」を達成するにはEV、FCVの拡大が必要となる。現在、EVとプラグインハイブリッド車(PHV)の比率は19年に0.9%にとどまっており、新目標の達成には大幅な引き上げが求められる。政府は電動車の販売を増やすため、燃費規制のさらなる強化のほか、販売目標に達しない企業が達成企業から排出枠を買って補う取引制度の創設も検討する。EV、FCVの普及に向けては、急速充電設備や水素ステーションの設置などのインフラの拡充が課題となる。現状では、EV向け急速充電設備は、2019年9月時点7800基。水素ステーションは、全国で135カ所にとどまる。水素の製造コストやステーションの設置コストなど製造、輸送、供給を結ぶ流れを築くには戦略的整備や規制緩和が求められ、EV用急速充電設備の拡充も含め、官民が連携してインフラ整備を推進していくことが必要となる。また、普及を阻む最大の課題であるコストの改善策については、政府が、FCVの燃料電池価格や水素貯蔵タンクの価格低減を目指す方針を掲げているが、今後、消費者が電動車を求める際の明確なメリット提示や段階を踏んだ需要喚起策や補助金などの政策が欠かせない。


EVは走行時の二酸化炭素(CO2)排出量はゼロだが、火力で発電した電気で走ればトータルでのCO2排出量はゼロではない。さらに、自動車の生産から廃棄までライフサイクル全体でCO2排出量を評価する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」でみると、EVは電池の製造で2倍もの電力を消費するとの指摘もあり、メーカーにおいては、ライフサイクル全体で環境負荷を下げることが求められる。そして、EVを増やしていけば、充電が増えることからどうしても電力需要は増えることになる。このガソリン車から電動車への移行に伴って増える電力需要に対し、いかに温暖化ガスの排出を抑えた電源を確保するかが、今後の大きな課題となる。EVの普及で増加する電力需要を、石炭火力などCO2を排出する電源を使えば「50年の温暖化ガス排出量の実質ゼロ」の達成は困難となる。そのため、電動車を普及させてCO2排出を削減するには、日本の電源インフラのゼロエミッション化も同時に進めることが欠かせない。

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BCT Monthly report 2021年02月