Monthly rep. 2021年12月 ―ライフスタイル・信号処理・その他―

今月は、ライフスタイル・信号処理・その他分野の状況を整理した。政府の内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局は、地方創生テレワークの施策を打ち出した。地方創生テレワークは、東京圏に立地する企業に勤めたまま、テレワークなどを活用して地方に移住する働き方のこと。同事務局は、地方創生テレワークの普及に向けて、地方創生テレワークに前向きな企業・団体を対象にした自己申告制度と地方創生テレワークで優れた取り組みや成果を上げた企業を対象にした表彰制度「地方創生テレワークアワード」創設を発表した。同事務局が地方創生テレワークの普及に向けた取り組みを強化するのは、新型コロナによるテレワーク導入企業の増加を契機に、東京圏に人口が一極集中する現状を是正するため。日本は、東京都心に企業が集中し、東京圏と地方の経済格差が課題になっている。東京圏に勤める人がテレワークやサテライトオフィス、ワーケーションなどを活用しながら転職せずに地方で働ける環境が整備されれば、東京圏から地方への新たな人の流れが生まれ、地方移住者の増加による地域活性化が期待できる。実際、コロナを契機に地方移住に関心を持つ人が増えている。内閣府が発表した今年の調査では、東京23区在住者の38%が地方移住への関心を持っており、19年調査より10ポイント増えている。在京の大手企業では、コロナ禍を契機にリモート勤務制度を拡充し、ワーケーションや地方居住も可能とした。企業側は、新たな働き方により社員のワークライフマネジメントの向上のみならず、企業価値の向上、個人や企業としての地域貢献にもつながることを期待している。地方にとっては、これまで、移住希望者にとっての大きな壁が職探しや収入の減少であったが、テレワークにより転職なき移住が可能になることで、都市部から人を呼び込む大きなチャンスとなっている。東京都心から2時間圏内の自治体では、移住相談件数が増えており、社員をお試しで滞在させる企業に最大で100万円を補助する制度を新設して移住者を呼び込もうとしている。東京から離れた自治体も受け入れに積極的に取り組んでいる。県庁に無料のテレワークオフィスを整備し、東京からのテレワーク移住者を含めて1日平均20人の利用者がある自治体もあり、新しい人の流れや創出につなげようとしている。もっとも、自治体がすべて追い風に乗れるわけではない。地方への人の流れを定住につなげるには、暮らしやすさやその土地の文化などの魅力の発信や移住後のフォローが欠かせない。テレワーク移住するビジネスパーソンは、大企業の文化やマネジメント、知識、経験など地域に伝え刺激を与えてくれる存在でもある。移住者を企業誘致の端緒ととらえ、工場立地を想定した従来型の誘致策にこだわらない柔軟な施策が求められる。また、今後、新型コロナの感染が収束するとテレワークの実施企業が減少する可能性もある。人材確保や企業イメージの向上など地方創生テレワークの導入によるメリットを企業に広く発信し、定着させる必要がある。今後、テレワークを活用した移住・定住が、働き手、企業、自治体の「三方良し」の実現につながることに期待したい。

信号処理の分野では、地域限定の高速通信規格「ローカル5G」が幅広い業種で使われ始めた。ロール状の鋼材を切断して鉄板などに加工する工場では、自動検査の実証実験を開始。高精細の8Kカメラが分速100メートルで加工ラインを流れる製品を撮影。無線で画像データをサーバーに送り、AIが傷の有無を判定する。従業員による目視検査に比べて検査スピードが5倍に速まった。高精細データは伝送容量が大きく、4GやWi-FiではAIが0.3ミリ程度の傷を画像で検知することは難しかった。火力発電所や製鉄所においても、ローカル5Gを使って多くの人手を割いてこなしている点検や輸送作業などの遠隔管理を実現するための実証実験が行われている。現状では、現場点検などの業務の半分程度の省力化が実現している。今後は、温度や振動などを感知するためのセンサーやカメラが付いた自走式点検ロボットを導入し、さらなる省力化を目指す。鉄道業界では、ローカル5Gを活用した線路の異常検知と運転支援業務の高度化に関する実証実験を始める。列車や駅のホームに設置した高精細4Kカメラで撮影した映像をローカル5Gで伝送し、AIで解析する。これにより、目視で行っていた線路巡視業務に加え、車両ドア閉扉合図業務の効率化と高度化を目指す。

多くの企業にとって自動化による生産性の向上は喫緊の課題となっている。ローカル5GはAI活用の土台となり、生産性の大幅な改善を見込めると期待されている。一方で導入コストが課題となる。現在は基地局1カ所の初期投資は1億円程度とされ、専用線の運用管理費もかかり、中小企業には負担が大きい。今後普及させるにはコストの引き下げに加え、どう活用できるのか運用事例の積み重ねが重要となる。

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BCT Monthly report 2021年12月