Monthly rep. 2020年8月 ―交通・物流関連―

今月は、交通・物流関連分野の状況を整理してみた。物流分野では、国内外の物流大手が先端技術による効率化に注力している。大手物流会社では、スタートアップと提携して、共同で荷物の識別能力を高めたロボットを開発。2022年度にも実証実験を始める。物流業界で既に導入されている荷下ろしロボは、事前に登録したサイズ以外の荷物には臨機応変に対応できず荷物を下ろせないことが多かったが、開発中のロボットは、高精度の感知器を搭載し、登録をしていないサイズの荷物も自動計測しトラックから荷下ろしができる。荷物のバーコードに登録した目的地も同時に読み込んでコース別に荷下ろしする。宅配便では輸送距離に応じてトラックを複数回、中継地で積み替えることが一般的なため、荷物の情報をあらかじめ把握することで、各中継地の積み替え時に次の配送がしやすいよう順番で荷物をトラックに迅速に置くことができる。配送経路の探索では、人工知能による配送ルートの自動作成などの業務支援システムの試験運用を行う。専用機器で荷物のバーコードから過去の在宅率や「置き配」の活用状況などを読み込み、在宅可能性が高く効率的な配送ルートを表示する。従来に比べて荷積みから出発までの時間がこれまでの半分以下になることが期待されている。今後も、荷物の増加で人手不足は今後さらに進む予想され、配送効率の引き上げが急務になっており、AI、IoT、ロボットなどを活用した取り組みが今後も期待される。


交通の分野では、地域の公共交通網の維持に向けた様々な取り組みが実施されている。経済産業省は2020年度末までに小型カートによる無人自動運転移動サービスの事業化に乗り出す。MaaSの一環として、曲線や人通りが少ない走行環境に限定して安全性を担保しながら運用を進める。採算性を意識して3台以上の遠隔監視によって操縦し、過疎地での移動手段の確保や運行に携わる人員の省人化を狙う。カートは一定の条件下で運転をシステムに任せる「レベル3」の車両を導入する。不採算の路線バスがある自治体では、路線バスとタクシーの中間的なサービスとして「相乗りタクシー」事業を始める。オンデマンド型で、人工知能システムがルートを自動で計算して複数の乗客を効率的に乗せて運行する。不採算バス路線の一部を廃止・減便し、補完的に相乗りタクシーを導入することで、交通利便性を確保する。自治体にとっては、不採算のバス路線への補助金が削減でき、交通空白地域の解消が期待されている。


地域公共交通を活用する目的は、「通勤・通学」のほか、「通院」や「買い物」が多い。そうしたニーズに対して、既存の公共交通事業者だけで対応しようとすると、利用者からの運賃収入のみとなるため、運用を維持するための負担が大きく事業の継続性が難しい。そこで、病院や企業などの民間事業者の移送手段との連携が考えられる。民間事業者は、当然ながら客が多く来てくれることを望んでいる。運行ルートなど細かな検討は必要になるが、例えば病院やスーパーと特定地点とのピストン輸送ではなく、駅を経由したり途中下車を可能にしたりなど多少のコストや負担がかかってもユーザーの獲得につながる民間事業者側と、目的地に行く選択肢が増える住民の双方のニーズを満たすことが可能となる。実際に民間事業者と協定を結んで住民の移送手段として活用している自治体がある。そこでは、民間事業者が、予約に応じて乗降場所や経路を変更できるデマンド型交通の乗り合い送迎サービスを提供している。病院などの医療機関への通院や、スーパーマーケット等の商業施設への買い物、公共施設での文化活動の送迎を行い、地域の「交通難民」の“日常生活”を支援する事業を行っている。事業主体は民間企業が担い、自治体はその事業のスポンサーとなり、自治体以外にもエリアスポンサーと呼ばれる協賛者を多数募ることで、運賃以外にも収益源をつくって事業継続を目指している。また、車両にセンサーを設置することで道路面の状況を把握し、自治体へ道路破損などの情報を提供することや、会員ネットワークを活用した物販、貨客混載などサービスの拡大を行っていくことで、移動手段以外のさまざまな付加価値をもたせることも検討されている。貨客混載に関しては、JR東が、朝地方の漁港で水揚げされた鮮魚を新幹線の客席の一部を使って輸送する貨客混載の実証実験を実施している。地方にとっては、この新幹線輸送が地域の活性化につながると期待されている。地域内でも、食料品をはじめとする生活必需品などを運べるようなヒトとモノの両方を運ぶサービスが簡単にできるような規制緩和も期待したい。

地域公共交通を考えるうえで認識しなければならないことは、バスの存続が目的なのではなく、地域住民の生活の足の確保が一番の目的である。そのため、自治体には、公共交通事業者、民間事業者との共創関係を構築し、利用者やまちづくりの視点から方策を模索し、持続可能な新しい移動手段の実装を検討して行くことが求められる。

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BCT Monthly report 2020年08月