Monthly rep. 2020年6月 ―ライフスタイル・信号処理・その他―

今月は、ライフスタイル・信号処理・その他分野の状況を整理した。新型コロナウイルスの感染拡大を機に、これまで敬遠されてきたリモートワークを企業などが一気に導入した。内閣府が実施した調査結果では、新型コロナウイルス感染症の影響で全国の3割以上の人がテレワークを行い、このうち継続希望は8割超に上った。また、新型コロナウイルス感染拡大を機に普及した在宅勤務の定着に向けて、企業が制度の見直しに動き始めた。時間や場所にとらわれない働き方を進め、働く場所や時間を社員が柔軟に選択できるようにする。企業にとっては、人材採用のスケールをオフィスの所在地と切り離して考えることができるようになり、都市部と地方部の雇用機会格差の解消につながる可能性も出てきた。政府も、2020年の成長戦略案では、テレワークを含む新しい働き方の定着を柱のひとつに据える。地方自治体では、この流れを受けて企業誘致に力を入れ始めている。人の密集を避けるための都市部を中心としたテレワーク拡大や生活様式の変化をチャンスと捉え、オフィスの移転やワーキングスペースの利用で地方を訪れる人を増やし、地域の活性化につなげたい考え。今後、第5世代通信(5G)移動通信システムの活用が進めば、地方移住の流れがより強まる可能性がある。
ただ、導入が進んだ一方で、課題も浮上した。労務管理や意思疎通がしにくいといった非対面ならではの問題のほか、ペーパーレス化が不十分で資料を社内に取りにいくケースや、押印など日本ならではの商習慣がテレワークの妨げになっているとの指摘も相次いだ。テレワークは、育児や介護と仕事の両立や、地方での雇用機会の創出など、日本が抱える課題の解決という点でも重要で、感染対策と経済の両立を目指す「新たな日常」を定着させるためにも、課題の解消に向けた官民の取り組みが求められている。
信号処理分野では、今春から第5世代通信(5G)の本格運用が始まり、自動運転など産業分野での利用も視野に入ってきた。航空会社では、安全で快適な航空サービスの実現に向け、航空機整備の遠隔作業支援などでの実用化を目指すため、5Gの環境を整備し、4K解像度の映像を用いた整備作業の遠隔業務支援の実証実験を実施した。遠隔地にいる指示者が、作業者の映像を見ながら指示できるか検証。これまでは、たびたび映像が止まってしまう問題が生じたが、5Gでは機材の細かな部分まで確認でき、円滑に指示を与えることができたという。5G電波が航空機に与える影響などを分析し、実用化に向けた検討を進める。
建機メーカー各社が進めるのが、遠隔操作などを含めた建機の無人化である。工事の現場では少子化による人手不足に加えて業界全体の高齢化に頭を抱えている。加えて、建設業界につきまとう危険な仕事などのイメージも人手不足に拍車をかけている。これは業界の高齢化を後押しする一因となっている。これらを解決する手段の一つが、なるべく人を介さない現場を作り出すこと。建機は走行するだけでなく複雑な作業が多い。そこで各社は機械の特性や利用シーンに合わせて、遠隔操作や部分的な自動化、そして完全自動化といったステップで開発に着手している。今、実現に向けて各社が最も力を入れるのが、本当の意味での遠隔操作。本社や各支店の事務所など現場が全く見えない遠隔地で建機を操作できるようにすることである。走行だけでなく複雑な動きをする建機は大量のデータのやりとりが必要となってくるため、高速・大容量・低遅延の5Gでなければ実現はできない。建機メーカーと通信会社との実証実験では、ICT建機と遠隔操作システムを5Gに接続。建機に搭載した複数のカメラで撮影した現場の映像と建機への制御信号を双方向でリアルタイムに送信するという実証を行っている。現場の映像や必要なデータの送信が遅れると、現場で必要な動作と遠隔地の操作に時間差ができてしまい、生産性の低下につながるが、5Gの特性でこの問題を解消し、遠隔地でもリアルタイムに把握しながら、正確で効率的な現場施工と管理が可能となる。焦点となるのは「いかに現場で作業している感覚で操作ができるか」ということ。今後、音や操縦席の振動などといった現場の状況をどのようにフィードバックするかが課題となる。また、ICT建機が5Gとつながることで収集できるデータの量が格段に上がる。AIを活用し、この各種データを建機に学習させ、建機自体が現場の危険を判断したり、適切な作業を決めるためのアプリケーションなどの実用化が期待されている。
将来的に5G、AI、ロボティクス技術などが普及し始めれば、工事現場にある建機を遠隔地のオペレーションセンターから一元的に建機をコントロールしたり、工場の製造現場でも遠隔地からロボットを操作し作業を進めて行くことが可能となる。これによって、建設現場や製造現場などでも、場所や働く人を選ばない柔軟な働き方や雇用が実現し、分散型社会への転換が進むことが期待される。

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BCT Monthly report 2020年06月