Monthly rep. 2020年12月 ―ライフスタイル・信号処理・その他―

今月は、ライフスタイル・信号処理・その他分野の状況を整理した。総務省の人口移動報告によると、東京圏は7、8月に転出超過に転じるなど、コロナ禍をきっかけに首都圏の都市部から郊外への移住を目指す動きが広がっている。テレワークの普及で会社に通勤する機会が減る一方、自宅で過ごす時間が増えたことで住環境の大切さが見直されている。政府は7月に閣議決定した地方創生の基本方針で、リモートワークの普及に関して、国民の意識や行動が大きく変わっており、この機会を逃さず地方への仕事の移転や社員らの地方移住に向けた機運を醸成するとしており、内閣府は来年度の概算要求で、テレワーク推進に向けた自治体の取り組みを支援する新交付金を創設する。地方移住者に最大100万円を支給する事業は対象を拡大し、子育てや介護などの事情で東京から地方に移ってテレワークで仕事する人も新たな対象とする方針。郊外の自治体は「近場の田舎」の良さをアピールし、移住促進に力を入れている。定住促進のため、空き家活用や通勤電車の指定席購入にかかる費用を助成する。今後も、ヒトの流れを郊外に向けるためには「地域の魅力を高める街づくり」や、地元の人々との密接なつながりを確保できるかどうかが課題となる。テレワークが普及したことで、もう一つの新しい働き方として「地方副業」も注目されている。生活の拠点は都市部に維持しながら、地方企業で月に1~4回程度の副業をするというもの。リモートによる地方副業の大きなメリットとして、転職をせずに本業の所得を維持したまま別の仕事を試せることや、キャリアやスキルアップを図れること、リスクを抑えて地方移住の準備ができることなどがあげられる。地方企業側も、地方だけでは得られない知識や情報を外部から得られる機会が拡大するメリットがあり、地方企業の副業求人も昨年と比べて大幅に増加している。若者の人口が減少している地方の企業では、深刻な人材不足が続いているが、一方で、能力の高い人材はどうしても大都市に集中する傾向にある。「地方副業」という新しい労働スタイルの登場によって、地方企業の優秀な人材確保と事業の発展、ひいては、地方の活性化につながることが期待される。


信号処理分野では、携帯電話以外の企業や自治体がエリアを限定した5Gネットワークを整備できる「ローカル5G」の実証実験が加速している。次世代のモビリティーサービスの開発では、ローカル5Gを用いて、道路付帯物に設置したカメラで交差点の俯瞰(ふかん)的な映像を取得し分析。横断者情報や衝突予測情報、速度超過車両情報を周囲の5G端末搭載車両へ通知し、通常では死角となり得る位置の危険車や人もデジタル情報化することで、安心・安全な運転支援や自動運転を検証する。地方都市では、大学と連携して、自動運転の公道実験について、ローカル5Gを使い、交差点などの交通情報を解析しながら安全走行できるかの実証検証も始まっている。また、近年、自然災害現場での無人化施工は、2次災害を防ぐため、極めて有効な手段と見なされていることから、災害現場などのネットワーク対応型無人化施工を想定した実証実験が実施され、ローカル5Gを活用した4K映像の伝送と重機模型のVR遠隔操作に成功した。今後、実現場での運用に向けて、ICTを活用した無人化施工の取り組みが進められる予定である。ただ、「ローカル5G」の普及については、当初の期待通りには進んでいない。その大きな要因の一つとして、通信網の構築時の費用が高いことがあげられる。2019年に解禁された周波数帯域は、4Gの基地局も設置しなければならないため整備コストが高く運用も複雑であった。また、対応する端末も数が少なく種類が限られるというのも普及を阻む要因の1つとなっていた。しかし、2020年12月に、自前で通信網を構築する際の費用を抑えられる周波数帯の利用が解禁されたことから、総務省へのローカル5Gの免許申請件数が急増している。新周波数帯では通信網に使う基地局の費用を大幅に削減することが可能となる。また、新周波数帯と既存の周波数帯では、新周波数帯の方が通信する際の方式がシンプルで通信機器数なども少なくて済む。課題だった通信網構築時の高額な投資が低減されることで、今後の活用のハードルが下がり普及が加速することが期待される。


ローカル5Gは、無線技術やネットワーク技術などについて専門的な知識のない利用者や地域の企業らにこそ、多くの潜在的なニーズがあることを想定され、それらのニーズにローカル5Gは細やかに応えていく必要があることが挙げられる。そのため、ローカル5Gの円滑な普及には、地域の通信事業者などが地域特有のニーズをくみ取りながら、個別のニーズに応えるためのネットワークを構築することが重要になってくる。

詳しくはこちらへ↓

BCT Monthly report 2020年12月